『成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学』ロバート・H・フランク
経済学の本を読むなんて、少し前の自分には
想像もつきませんでした。
「経済」という言葉にアレルギーがあったからです。
よくわかりませんが、数学に苦手意識があったから
自分には経済は関係ない、
と決めつけていたような気がします。
小さい頃はそうでもなかったのですが、
数学は数Ⅰまでで挫折しました。
数Ⅱはもうお手上げ!代数幾何とかもう無理!
公立では比較的進学校でしたが、
そこで憧れていた国立大学を諦めました。
今思えば、そんな10代の頃の小さな挫折感が
ずっと潜在意識にへばりついていたのかもしれません。
でも、最近何だか数字が好きになってきたんです。
The文系なのでおそらく今も数学は苦手です。
とはいっても、自分が思っているほど
数字が苦手な訳じゃないと気付きました。
今回自分が読みたい本を図書館で探していた時に、
偶然この本を見つけました。
成功と運への関心が高まっているので、
背表紙から引力を感じ、タイトルに「経済学」が
入っていたのに借りてしまいました。
結果としては、とても面白い本でした。
最後の謝辞で、筆者自身が、自分は他の経済学者と
違って、数学的な法則ではなく、
現在世界の人々の経験を考察するのに
時間を割いていると書いてあったので、
そのせいかもしれませんけどね。
運の力があまり取りざたされないのはなぜか?
少し前に読んだマルコム・グラッドウェルの
『天才!成功する人々の法則』の内容がそのまま
引用されていた通り、
筆者のロバート・H・フランクも
成功するには運の力が大きいということに着目しています。
私も以前は”努力し続ければ成功できる”という
世間一般の考え方を信じていましたが、
それは100%正しくないと思うようになりました。
イチロー級ではないにせよ、
私自身も一般人としては、自分なりに一生懸命
努力して来たつもりですが、
実際にはいまだもって自分の目指す成功には到達できていません。
もちろん、成功には努力は不可欠ですが、
運の力も不可欠です。
才能と努力なしに成功するのは難しいが、才能があり、努力をしても、経済的に成功する人は少ない
と筆者も述べています。
確かにそう思いませんか?
スポーツの世界では割とわかりやすいですが、
普通の社会生活においても
運によって結果が左右されることは多々あります。
でも、世間ではあまり運は強調されません。
成功者の中でも素直に運に感謝する人もいますが、
ほとんどの成功者は、自分の成功は努力や実力によるものだと考えているようです。
筆者は日頃人々が運を軽視している理由として、
才能と努力を強調してほかの要素を排除すれば、成功者が自分が獲得した報酬の権利を正当化できるからだろう。
という理由の他に、もう一つの可能性として
運の重要性を否定するのは、成功の前にたちはだかる数々の生涯を乗り越えやすくするためだ
と述べています。
なるほど!
成功する可能性があると信じているからこそ、
人々は努力を苦にせず頑張れるのであって、
実は想像以上に運の力が大きいことを知ると、
努力を怠ってしまうかもしれないというのは
一理あるような気がします。
成功したのは運のおかげ。だからもっと社会に還元しよう!
この本がおもしろいのは、普通自己啓発系の本だと
このような人々の心理からマインドの話などに
展開するのですが、
筆者は経済学者なので、話が公共事業への投資や
税金などの話へ発展していくことです。
当たり前といえば当たり前ですが、
人々の心理と経済活動は深い関係があります。
経済学者はこんな風に分析しているのかと、
私にとっては新鮮で初めての視点がたくさんあり
知的好奇心が刺激されました。
筆者は累進課税を推進している経済学者のようで、
なぜこのように運や偶然が成功に関与しているか
述べているかと言うと、
運の役割を理解しなければ、成功者は、稼いだものは自分のものだといっそう強く感じてしまう。
成功には運が大切だ。それを認めなければ、自分の努力の成果だとして稼ぎに対する権利意識が強くなり、納税がますます敬遠される。
といった指摘の通り、富裕層に累進課税を認めてもらうのが目的です。
経済学者らしく、人が幸運だと感じると
公益への貢献度が高まるという実験結果を
数値で表したり、
運の重要性を認めている成功者は認めていない
成功者よりも自分の成功に感謝する傾向が強く、
感謝の気持ちが強い人の方が楽観的で
主観的な幸福感も高い、
という実験結果を示したりしています。
筆者は他にも「ひとり勝ち市場」という理論を
展開しており、富裕層とそうではない人との
経済格差だけではなく、
ある一つのジャンルに注目してみても、
成功者とそうではない人との収入格差が大きいこと
にも注目しています。
しかし、一番成功している人が一番有能だ
とは言えず、本当は運の力や些細な偶然によって
成功しているということに気付けば、
自分の成功に感謝し、もっと社会的な問題に
目を向けて、税金を出し渋ることなどなくなる
のではないかと考えているようです。
これらの問題はアメリカだけではなく、
日本においても言えることではないでしょうか。
ネットビジネス界だけ見ても、
成功者と呼ばれる人々の多くは海外移住しています。
それは日本に高い税金を納めたくないからです。
自分が努力して稼いだお金を
日本政府に横取りされるような意識があるからでしょう。
国の未来よりも自分の資産を守りたい人が多いのも
仕方がないことかもしれませんが、
ロバート・H・フランクは感謝をすることによって
ますます豊かになる、
感謝をすると自分の評価も上がる
といったように、運への感謝を促していました。
その感謝の気持ちが、
ますます自分の資産を増やすことだけではなく、
公共投資へと結び付くとよいのですが、
どれだけアメリカの富裕層の心に響いたでしょうか?
私が今後経済的に成功したら、文句を言わず
高い税金を払って日本の未来に貢献しようと思いました。
成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学 [ ロバート・H・フランク ]
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